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悪役が主役の『クルエラ』が作られた理由

 

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https://twitter.com/cruella/status/1392168430027960322

2021年5月28日㈮に公開を控えた『クルエラ』(エマ・ストーン主演)。ディズニーはこれまで『ライオンキング』『アラジン』『ジャングルブック』『美女と野獣』などの実写作品を制作し、内容的にも興行的にも成功を収めてきた。しかし、なぜこのたびの実写映画の主人公として、悪役であるクルエラを据えたのだろうか。

クルエラは無垢な子犬を誘拐し、毛皮を剥ごうとする悪人だ。やむにやまれぬ事情がって悪事を働かざるを得ないというようなバックボーンもなく、完全な私利私欲のかたまりである。数多いるディズニーヴィランの中でも、なかなか同情できない自分勝手な人間であるという印象を抱いてしまう。犬好きの人間にとっては、たとえフィクションといえども許せない人物なのではないだろうか。

 

もちろん、悪役の主人公を描いた映画が成功しないというわけではない。2019年の傑作『ジョーカー』や、古くは『ゴッドファーザー』でも、主役はあくまでも悪人だった。しかし、彼らの犯罪に至る動機・背景を丁寧に描くことによって、鑑賞者の興味を惹きつけた。

 

さて、ではクルエラには悪人となるにふさわしい理由があったのだろうか。

ここで参考になるのは、1990年代に放送されたアニメシリーズ『101匹わんちゃん』だ。その中のエピソードによれば、クルエラの両親は家に不在がちで、幼少期に十分な愛情を注いでもらうことができなかった。そういった空虚感を埋めるために、クルエラは友達としてそばにいてくれるようなダルメシアンの子犬を欲しがった。

ところが、彼女の両親は手間のかかるペットを嫌い、ただのぬいぐるみのダルメシアンのおもちゃを与えただけだった。このことに腹を立てたクルエラは世の中に絶望し、後々腐った人間へと堕ちていくことになる。

こういった背景があるからと言って、大人になった彼女がしでかしてきたことの言い訳にはならないが、このエピソードはクルエラに哀愁感を与えるものだ。今回の実写映画のクルエラに同様の経験があるのかは不明だが、観客の共感を得られるようなストーリーが語られることになると予測できる。

クルエラが完全な善人になることは今後もないだろうが、2014年の『マレフィセント』(アンジェリーナ・ジョリー主演)のようなアンチヒーローになることを期待したい。